【開発者向け】モバイルアプリ開発に最適な手法・アプローチ方法とは?成功例や効果的な開発手順などを解説
目次
ビジネス環境が急速に変化する現代において、企業のデジタル戦略としてモバイルアプリの活用は重要な選択肢の一つとなっています。モバイルアプリを活用した顧客接点の強化や業務効率化の需要が高まる一方で、モバイルアプリ開発の現場では、開発規模の増大やプロセスの複雑さ、品質確保と開発期間短縮の両立、技術人材の不足など、さまざまな課題に直面しています。
本記事では、モバイルアプリ開発における最適な手法、成功事例、そして効果的な開発手順について解説します。新たな開発アプローチを取り入れることで、プロジェクトの成功率を高める方法をご紹介します。
モバイルアプリ開発の現状と課題
モバイルアプリ開発環境の現状と課題について解説します。
開発環境の複雑化
モバイルアプリ開発においては、複雑性が日々増しています。スマートデバイスとともに普及が加速したクロスプラットフォーム開発や、昨今の5G、AR/VR、AI機能統合など、次々と現れる新技術への対応も求められます。また、ユーザー体験の高度化により、より直感的で洗練されたUI/UXが期待されるようになりました。加えて、個人情報保護や決済機能におけるセキュリティ要件も厳格化しており、開発環境はかつてないほど複雑化しています。
開発現場の課題
多くの開発現場では市場競争の激化により、開発期間の短縮と品質確保の両立が強く求められています。加えて専門スキルを持った開発者の確保が難しく、人材リソースの不足に悩む企業も少なくありません。さらに、開発途中での要件変更や市場変化への柔軟な対応も求められています。こうした課題は従来のウォーターフォール型開発手法では対応が難しく、新たな開発アプローチへの転換が必要です。
モバイルアプリ開発の最適な手法
モバイルアプリ開発においては、「どのように開発するか(開発手法)」と「どのようなプロセスで進めるか(開発アプローチ)」の両方を適切に選択することが重要です。
まずは主な開発手法を解説します。
モバイルアプリの主な開発手法 |
|||
---|---|---|---|
ネイティブアプリ開発 |
クロスプラットフォーム開発 |
ノーコード/ローコード開発 |
|
使用技術 |
iOS: Swiftなど Android: Kotlinなど |
Flutter、React Nativeなど |
GUIベースの開発環境 ドラッグ&ドロップ |
開発期間 |
長い |
短縮可能 |
非常に短い |
開発コスト |
高い |
中程度 |
低い |
必要スキル |
専門のエンジニアが必要 |
フレームワークの知識が必要 |
非エンジニアでも可能 |
ネイティブアプリ開発
ネイティブアプリ開発は、特定のプラットフォーム向けにその環境に最適化されたアプリを一から構築する手法です。iOSであれば代表的な言語であるSwiftや、AndroidであればKotlinなどの専用言語を使用します。ネイティブならではの高速動作が特徴で、画面切り替えやアニメーションがなめらかに動作します。カメラやセンサー、バックグラウンド処理など、端末が持つすべての機能に制限なくアクセスでき、UI/UXも完全カスタマイズできます。また安定性とセキュリティが比較的高く、オフライン対応も容易です。
一方で、開発コストと期間が大きくなる傾向があり、iOS・Android両方に対応するには別々に開発が必要です。専門スキルを持つエンジニアが必須であり、OS更新への対応など継続的な運用負担も考慮が必要です。
クロスプラットフォーム開発
クロスプラットフォーム開発は、FlutterやReact Nativeなどのフレームワークを使用して、単一のコードベースから複数のOS向けアプリを開発する手法です。一度のコーディングでiOSとAndroidの両方に対応できるため、開発工数を大幅に削減でき、リリースまでの期間も短縮できます。
課題としては、ネイティブアプリ開発と比較するとパフォーマンスが劣る可能性があり、端末固有の機能アクセスに制限があります。またUI/UXのカスタマイズに制約があり、OSアップデートへの対応遅延も考慮点です。
ノーコード/ローコード開発
ノーコード/ローコード開発は、GUIベースの開発環境を使用し、プログラミングをほとんど必要とせずにアプリを構築する手法です。テンプレートやドラッグ&ドロップによる直感的な操作で、アイデアを数日で形にできるスピード感が魅力です。非エンジニアでも開発に参画でき、外注費用や人件費を大幅に節約できます。APIやプラグインを活用することで、既存システムとの連携も比較的容易です。
デメリットとしては、カスタマイズに限界があり、複雑な処理の実装が難しく、高度な要件には不向きです。プラットフォームに依存するためベンダーロックインのリスクも考慮が必要です。
ほかにもさまざまな開発手法がありますが、最適な開発手法を選択する際には、ビジネス要件と技術要件の両面から総合的な判断が必要です。アプリの目的、必要機能の複雑さ、開発予算、市場投入までのタイムライン、長期的な保守計画などを慎重に評価しましょう。
モバイルアプリ開発に最適な開発アプローチ
次にモバイルアプリ開発に最適な開発アプローチを3つ紹介します。
最適な開発アプローチ |
|||
---|---|---|---|
アジャイル開発 |
DevOps |
DevSecOps |
|
概要 |
反復的で柔軟な開発プロセス |
開発と運用を統合したアプローチ |
DevOpsにセキュリティを組み込んだアプローチ |
特徴 |
・段階的な機能開発 ・変化する要件に柔軟に対応可 ・チームの自己組織化を促進 |
・ビルド、テスト、デプロイの自動化 ・品質の一貫性確保 ・短縮化されたリリースサイクルとFBループの強化により、ユーザーニーズの対応が迅速化 |
・セキュリティ・バイ・デザイン ・自動化セキュリティテスト ・早期脆弱性発見 |
アジャイル開発
アジャイル開発は、反復的で柔軟な開発プロセスを特徴とする手法です。2〜4週間のスプリントで機能を段階的に開発し、早期に動くプロトタイプを提示してフィードバックを取り込みます。変化する要件に柔軟に対応でき、開発チームの自己組織化を促進します。ネイティブアプリ開発、クロスプラットフォーム開発、ノーコード/ローコード開発のいずれの開発手法とも組み合わせることができ、特に変化の激しい市場環境に対応するプロジェクトに適しています。
DevOps
DevOpsは開発(Development)と運用(Operations)を統合したアプローチで、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を中心とします。ビルド、テスト、デプロイの自動化により効率が向上し、品質の一貫性が保たれます。リリースサイクルが短縮化され、フィードバックループが強化されるため、ユーザーニーズへの対応が迅速になります。特に頻繁なアップデートが必要なアプリ開発に効果的です。
DevSecOps
DevSecOpsはDevOpsにセキュリティ(Security)を組み込んだアプローチです。設計段階からセキュリティを考慮する「セキュリティ・バイ・デザイン」の原則に基づき、自動化されたセキュリティテストを導入します。開発の早期段階で脆弱性を発見でき、コンプライアンス対応も効率化されます。金融アプリや個人情報を扱うアプリなど、高いセキュリティ要件が求められるプロジェクトに不可欠です。
DevSecOpsについて詳しくは「DevSecOpsの実践解説:セキュリティと開発速度の両立」をご覧ください。
モバイルアプリ開発例
NTTデータMSEでは、強みであるモバイル・サーバー双方の開発技術を駆使し、企画から開発・運用まで、モバイルアプリ開発をワンストップで提供しています。通信・放送、小売・流通、メディカル・ヘルスケアなど幅広い業界に対応しています。
当社の開発事例はこちらからご覧ください。
モバイルアプリ開発の効果的な手順
効果的なモバイルアプリ開発の手順をステップバイステップで解説します。
STEP1: 戦略立案・プランニングを徹底的に行う
効果的なモバイルアプリ開発は、綿密な戦略立案から始まります。アプリが解決する課題や達成したい成果を明確化し、ビジネス目標との整合性を確保しましょう。
次にユーザーペルソナの作成と利用シナリオの検討を通じて、ターゲットユーザーを具体的に定義します。また、市場の類似アプリを調査し、差別化ポイントを特定することで競争優位性を確立できるでしょう。ほかにもプロジェクトに最適な開発言語、フレームワーク、バックエンドインフラを選定し、技術的な基盤を固めます。最後に、内部リソースと外部リソースの最適な組み合わせでチーム体制を構築し、開発の準備を整えます。
STEP2: デザイン設計を密にする
ユーザー体験を最大化するデザイン設計は、アプリ成功の鍵です。情報アーキテクチャと画面遷移の設計を通じて、直感的なユーザーエクスペリエンスを実現します。また、各プラットフォームのガイドラインに準拠したビジュアル設計により、一貫性と使いやすさを両立させましょう。さらにインタラクティブなモックアップを作成して検証することで、開発前に問題点を発見できます。開発者向けの詳細な機能仕様書を作成し、認識齟齬を防ぎます。同時に、パフォーマンス、セキュリティ、スケーラビリティなどの非機能要件も明確に定義し、品質基準を確立します。
STEP3: アジャイル開発を実践する
数あるアプローチの中でも、先述したアジャイル開発手法を実践することで、柔軟性と効率性を両立できます。2〜4週間単位でのスプリント計画を立案し、短期間で成果物を生み出す体制を整え、15分程度の日次進捗確認ミーティング(デイリースクラム)で、チーム内の情報共有と障害の早期発見を促進します。各スプリント終了時には、完成した機能をステークホルダーにデモし、フィードバックを収集します。定期的な振り返りを実施し、チームの開発プロセスを継続的に改善していきましょう。
STEP4: 体系的なテスト実施で品質を担保する
高品質なモバイルアプリ開発を実現するには、体系的なテスト戦略も重要です。単体テストやUI自動テストなどにより、効率的かつ網羅的な品質検証を行うことで、より確実な品質担保が可能になります。
当社の品質分析ソリューションでは、お客様の目的や目標に合わせて最適な分析パラメータおよび分析メトリクスを選定し、品質分析から改善提案、テスト設計・実施、テスト報告までの一貫した支援を提供しています。
詳しくはこちらをご覧ください。
また脆弱性スキャンと対策を通じて、セキュリティリスクを最小化しましょう。さらに負荷テストをおこなうことで、さまざまな使用状況下でも安定したパフォーマンスを確保します。ほかにも実際のユーザーによる操作性確認を通じて、ユーザビリティの課題を発見し改善します。発見された不具合は優先度付けを行い、計画的に解決することで、品質と開発速度のバランスを取ります。
STEP5: リリースと継続的改善を繰り返す
アプリのリリースはゴールではなく、継続的な価値提供のスタートです。ASO(App Store Optimization)を実施し、アプリストアでの発見可能性を高め、ベータテストや地域限定リリースなどの段階的ロールアウトにより、リスクを抑えながら市場投入します。
また、リリース後はユーザーレビューの分析と調査を通じて、貴重なフィードバックを収集し、改善点を特定します。このように利用状況とパフォーマンス指標を継続的に分析し、ユーザー行動の理解を深めましょう。こうした分析結果に基づき、定期的な機能改善と最適化を行い、アプリの価値を継続的に高めていくことがビジネスを真に成功させるために不可欠です。
モバイルアプリ開発は適切な手法の見極めが重要
モバイルアプリ開発において成功を収めるには、適切な「開発手法」と「開発アプローチ」の組み合わせを選択することが重要です。開発手法としては、高度なカスタマイズとパフォーマンスを実現するネイティブアプリ開発、効率的なマルチプラットフォーム展開を可能にするクロスプラットフォーム開発、迅速な開発とコスト効率を重視するノーコード/ローコード開発があります。
これらの開発手法に、アジャイル開発やDevOps、DevSecOpsといった効果的な開発アプローチを組み合わせることで、プロジェクトの成功率を高めることができます。特に従来のウォーターフォール型開発からアジャイル手法への転換は、変化の激しい市場環境に対応するための必須戦略といえるでしょう。
NTTデータMSEは、お客様のモバイルアプリ開発における課題に対し、包括的なサポートを提供します。ぜひお悩みの場合はご相談ください。
- iOS は、Apple Inc. の登録商標です。
- Swift は、Apple Inc. の登録商標です。
- Android は、Google LLC の登録商標です。
- Flutter は、Google LLC の登録商標です。
- Kotlin は、JetBrains s.r.o. の登録商標です。
- React Native は、Meta Platforms, Inc. の登録商標です。