技術だけではない「開発力」を養う。
NTTデータMSEのエンジニア育成とは

組込ソフトウェア領域で豊富な開発実績を持ち、IoT、オートモーティブ、プロダクトサービス事業などを展開している株式会社NTTデータMSE。携帯電話のソフトウェア開発で培った高い組込技術力をベースに、クラウドシステム開発やDXも含む幅広い開発実績を積み重ねてきた。そんなNTTデータMSEが、近年特に注力しているのがエンジニアをはじめとする人財の育成・キャリア形成だ。2020年には執行役員 樋口宏貴の下、「組込開発力強化ワーキンググループ」が立ち上げられ、基盤事業の質的拡充を図り、次なる成長事業を牽引していく人財を継続的に輩出するため奔走している。この取り組みの「実行責任者」であるワーキンググループの副主査・河木 史郷に、NTTデータMSEのエンジニアならではの強み、そして人財育成について聞いた。

【話者プロフィール】

株式会社NTTデータMSE
西日本事業本部 事業企画部 部長
組込開発力強化ワーキンググループ副主査 河木 史郷

2001年、入社。携帯電話の組込ソフトウェア開発からキャリアをスタートし、製造業向けのシステム開発にてさまざまな分野の顧客・開発案件や車載系組込開発を担当。また、本社にて車載クラウド領域に関するビジネス開拓を経験。開発部長と事業企画部長の兼任を経て、2023年より現職。

技術力・マネジメント力に留まらない「新たなNTTデータMSEの強み」

NTTデータMSEのエンジニアの強みは、担当分野や特定の機能に閉じず、その先にある製品やサービスの視点を持つことができる「大規模組込システム全体を俯瞰、思考出来る技術」にあるという。過去の携帯電話開発や現在の車載開発に代表される大規模開発の経験、それも製品全体に携わっていることから、ソフトウェアの開発だけでなく、ハードウェア、ファームウェア、フレームワーク、通信といった幅広い領域での知見が蓄えられていくのだ。

「携帯電話や車載関連製品はさまざまな機能群や部品から成り立っています。個々単体の開発を担える会社は数多くある一方で、全体を担える会社は希少なのではないでしょうか。

至らぬ点も多々ありますが、システム全体の視点・視座を持ち、お客様の伴走者として取り組んでいる点が評価をいただいているのではと考えています」

さらに昨今の大規模開発では、ステークホルダーが増え、必要とされる知識・スキルも広範囲かつ高度なものが求められるようになった。個々のエンジニアが製品やサービスのすべてを掌握することは困難とも言える中で、より良いものを世の中に送り出していくためには、エンジニアが自ら持っている情報・経験を提供しながら製品・サービスオーナーやハードウェア担当といったステークホルダーと意志をすり合わせ、モノを作り、最後には製品・サービス全体として組み上げていかなければならない。

こうしてエンジニアたちがソフトウェア技術に留まらず、「ステークホルダーとベクトルを合わせる視座・視点」、「関係者を巻き込み課題解決するリーダーシップ」、「信頼を勝ち取る技術折衝力」を鍛えられていることもまた、NTTデータMSEの新たな強みに繋がっているという。

「『お客様に育てていただいた』面も大きいと感じています。現場でご担当の業務について教えていただいたり、ご要望の理由について詳しく聞かせていただいたり、時には当社の抱える事情を汲んでいただいたりと、いわゆる腹を割って話すところまでお付き合いいただいて。一度は厳しい言葉を口にされたお客様でも、その後プロジェクト規模を拡大してくださったり、別プロジェクトをお任せくださったりといったこともありました」

変革が進む世界の期待に応える、エンジニアの「5つのファクタ」

なぜNTTデータMSEのエンジニアは新たな強みを得るに至ったのか。河木はその要因として「モノからコトへのシフト」と言われる価値観の変化を挙げた。

「高機能かつ手頃」が当たり前になった昨今、機能的な価値だけで勝ち抜くことは難しくなっている。その中で顧客は生き残りをかけ、提供する製品・サービスの価値を変えようと変革を進めている。つまり、ソフトウェアエンジニアへ期待するものも変化しつつあるのだ。

「もちろん我々も、その期待に応えるため成長しなければなりません。そのためには5つのファクタが重要だと考えています。5つのファクタとは、従来強みとして持っている『技術力』、『プロジェクトマネージメント能力』に加え、世の中の変化を感じとりステークホルダーと共創・協調・協力関係を生み出すための『EQ(Emotional Intelligence Quotient)力』、未知・多様な課題に対応するための『課題解決力』、そして『経験値』です」

この5つのファクタを伸ばす秘策が、組込開発力強化ワーキンググループによる育成カリキュラムだ。大きく「初級」「中級」「上級」の3ステップに分けられており、「初級」は、同社の組込開発において必要となる技術の基本要素である、LinuxやリアルタイムOS、マイコン制御の基礎を学べるコンテンツとなっている。

「中級」ではハンズオン形式が中心となっており、実際にモノを作る体験を通してスキル向上を目指す。開発規模の拡大に伴う分業制や、担当個別最適といった現場の課題を受けて、「業務だけでは経験することが難しい部分」を充当することが意識されている。例えば、OSのインストールといった環境構築から、その上で動くソフトウェアの開発など「ゼロベースからモノを動かす」経験を積むことができる。

「育成コンテンツの一部、初級向けの研修実施などは外部機関に委託していますが、全般的な企画は当社で行っています。特に中級以上になると内容も高度になるため、自社の有識者が知恵を出し合い、すべて内製で作りあげています。どのように仕上げればより効果が出るのか、難易度は適切か……例えば『陥りがちなミスを経験してもらうため、気づかれないよう自然に不具合を埋め込む』といった仕掛けはかなり難しく、ああでもない、こうでもないとワーキンググループの皆で頭をひねっています」

決められたものを作るのではなく、何を一緒に作るべきか考えていく

こうして「技術力」や「プロジェクトマネージメント能力」を養った者が参加する「上級」では、先ほど挙げた5つのファクタのうち「EQ力」「課題解決力」「経験値」に着目。社内外の有識者による講話やディスカッションを通して、エンジニアとしての視点・視座を上げる足がかりを作っていく。

「EQ力、課題解決力、経験値の3つは、現場でのOJTだけで身につけることが難しいレベルを想定しています。EQ力はいわば『感じる力』です。新しい技術や社会・業界の動向、お客様が口にされない潜在的な思いといったものを、どれだけ素直に感じ取って、ポジティブに反応できるか。課題解決力も、単純に技術的な問題を解決するだけではなく、『裏に潜んでいるような経営課題、業務課題を発見するところから、それを解決するために、お客様と伴走する力』だと考えています。経験値も『1人で経験できる範囲を超えて、エンジニアたちの集合知のような形で構成し、伝承していく』ことが必要だろうと」

技術力、プロジェクトマネージメント能力だけでは、あらかじめ決められたものを作ることしかできない。セオドア・レビットはかつて、ドリルを買いに来た顧客を例に、「顧客の欲しいものはドリルではなく、壁に絵を飾るための穴である」と説いた。いわゆる「ドリルの穴理論」だが、数十年を経て技術は進化し、今や壁に穴を空けずに絵を飾る方法もいくつも登場している。それに、画風や周りのインテリアによっては、床に直に置く方が魅力的に見えるかもしれない。エンジニアが、確かな能力を基にしながら、こうした視野の広い提案ができるか否かでは、当然大きな差がある。「どうすればいいのか」と迷う顧客にも親身に寄り添い、「何を一緒に作るべきか考えていく力」が今、求められているのだ。

組込ソフトウェアで業界一のシステムエンジニア・アーキテクト集団へ

育成カリキュラムへの参加は各ステップの要件を満たす者による希望制となっているが、2024年度は、組込開発に携わるエンジニア1,000名ほどの中から延べ586名が参加したという。

発足当初は組込開発のみだったスコープも、2023年度よりモバイルアプリ、機能安全、通信技術を順次取り入れている。さらに初級は今後、パートナー会社にも間口を広げるべく、コンテンツの整備や提供方法の検討を進めている。

「上級はディスカッションなども行いますから、育成の場であると同時にさまざまなバックボーンを持つエンジニアが集まって意見を交わし、知見を共有する場として成果を上げているのを感じます。高度な内容だけに、育成側のリソースが規模拡大に向けての課題となっていますが、育成側を増強する仕組みや提供形態の見直しなど検討を進めていきたいですね」

こうした旺盛な取り組みの原動力は、組込ソフトウェアで業界一のシステムエンジニア・アーキテクト集団を目指し、事業を通じて社会に貢献したいという思いにある。

「私たちはこれまでにも、組込ソフトウェアをはじめとする先進の技術力で、お客様や社会の発展に寄与してきました。

この先も、5つのファクタを持ち合わせた高度なエンジニアを育て続け、世界で通用する人財を開発し、また人財育成のロードマップを整え、我々が培ってきた強みを伝承していきます。その道のりは、これまでにない新たな感動をすべてのお客様へお届けし、さらに社会を発展させる未来へと続いていますから」

 

 

NTTデータMSEの3つの事業フィールド

– オートモーティブフィールド

https://www.nttd-mse.com/automotive/

– プロダクトフィールド

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– IoTフィールド

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新卒採用情報

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キャリア採用情報

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