データを活用したい、でも何から?─NTTデータMSEに聞く、止まっていた一歩の進め方
「データはあるのに、何から始めればよいか分からない」「どんなデータを分析すれば、ビジネスに貢献できるのか」──。データ活用やDX推進に携わる方の中には、こうした悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。組み込み開発を得意としてきたNTTデータMSEは、通信事業者向けのビッグデータ基盤に関わったことをきっかけに、データ活用事業を本格的に展開。現在は製造業を中心に、データ基盤の構想から構築、活用までを一貫して支援しています。Databricks Champion認定者も在籍するNTTデータMSEが、データ活用を進める上で何が重要だと考えているのか。プロジェクトをビジネス構想から技術面まで支援する2人のエンジニアに話を聞きました。
取材メンバーの紹介
第二デジタルビジネス事業本部
課長
小竹吾英(こたけ・さとる)
2003年に入社。携帯電話の組み込み開発からキャリアをスタートし、2012年よりデータエンジニアリング領域に携わる。現在はデータ活用事業のマネジャーとして、データ基盤の構想および顧客提案、プロジェクトマネジメント、組織マネジメント、事業開発まで一気通貫で推進している。
第二デジタルビジネス事業本部
課長代理
今井厚志(いまい・こうじ)
1995年に入社。Windows系システムの構築やサポートに従事した後、携帯電話のプラットフォームの構築に携わる。その後、NTTデータMSEがNTTデータグループに参画したのを機に、Webアプリの開発に携わり、以降は小売業や製造業のデータ分析基盤の構築に従事。2026年5月、Databricks が提供する「Databricks Champion プログラム」において、「Solutions Architect Champion」に認定。技術力に加え、発信力、コミュニティ貢献を兼ね備えたエキスパートとして活躍している。
第一章:エッジとクラウドをつなぐ架け橋として、データ分析に関わってきた
写真:小竹 吾英(第二デジタルビジネス事業本部 課長)
――NTTデータMSEがデータ活用事業に取り組むことになったきっかけを教えてください。
小竹:2008年にNTTデータが資本参加したことを機に、通信事業者向けのビッグデータ基盤の構築に携わったことがきっかけです。当時は、大規模データを効率的に処理するための分析基盤「Apache Hadoop」を活用していました。
そこで得た知見を生かして、その後はデータ分析用の分散データウェアハウス「Apache Hive」を活用して、小売業者向けに商品のランキング集計や発注予測のビッグデータ基盤の構築に携わりました。さらに、ECサイトと連携した案件を通じて、業務知識とデータ分析の知見を蓄積してきました。
今では「こんなことがしたい」というお客さまの声を聞くところから、データ基盤構築、活用に至るまでを一貫して支援しています。当社が強みとする自動車をはじめ、製造業にも支援領域が広がっています。
――現在は製造業案件が多いとのことですが、いつ頃から製造業テーマに取り組み始めたのでしょう。
小竹:自動車の案件に携わり始めたのは、2019年頃です。当時、電気自動車(EV)が注目を集め出し、各メーカーで効率的な充電方法の検討などがなされ、EVに関するデータ分析が盛んになりました。そこで私たちも自動車業界に領域を広げました。今では自動車をはじめとする製造業のデータ分析プロジェクトを手掛けています。
――データ分析に業務領域を広げたことで、既存事業にどのような変化がありましたか。
小竹:従来のSI事業では、システムを作った後は運用や機能追加・改善を担当するものの、その先の提案につながらないケースもありました。一方、SIにデータ分析がプラスされると、「データからこのような傾向が見えるので、このように改善しませんか」というような提案ができるようになります。システムを構築して終わるのではなく、そこで生まれたデータを業務改善につなげることで、お客さまへの提案の幅が広がったと感じています。

――MSEが強みとしてきた組み込み・エッジ領域と、クラウド上のデータ分析は、どのようにつながっているのでしょうか。
小竹:自動車や各種機器などのエッジ側では、様々なデータが生成されます。ただし、そのまま分析に利用できるとは限りません。何のために分析するのかを明確にしたうえで、必要なデータを選び、分析しやすい形に整え、クラウド上のデータ基盤に蓄積する必要があります。
当社は、組み込みソフトウェア開発で培ったエッジ側の知見に加え、クラウドやデータ基盤に関する知見も蓄積してきました。両方を理解しているからこそ、目的に応じた最適なデータ活用の仕組みを提案できます。
――データ分析をトリガーに案件や提案の領域が広がっているのですね。
小竹:はい。データ分析はエッジとクラウドをつなぐとともに、既存ビジネスとその先にある業務改善をつなぐ橋渡し役になると考えています。
第二章:データ分析プロジェクトが止まらないよう、「何のために分析するか」から一緒に考える
写真手前:今井 厚志(第二デジタルビジネス事業本部 課長代理)
――データ分析プロジェクトがうまく進まず、止まってしまうこともあると聞きます。
今井:私たちの経験上、データ分析プロジェクトが停滞する要因の一つは、構築した分析の仕組みが業務で十分に活用されないことです。データ分析で、最初に取り組むことが多いのが、データの見える化です。しかし、見える化の仕組みを構築しても、それが業務で活用されなければ意味がありません。
では、なぜそのような状況が生じるのか。私たちがデータ活用事業に取り組み始めた頃、ある小売業のお客さまから「これをやりたい」「あれもやりたい」と様々な要望をいただきました。それらの要望を満たす仕組みを作ったのですが、実際に継続して使われたのは、ランキング集計機能だけでした。
この経験から、何を見える化し、それを日々の業務でどう活用するのかを整理することは、決して簡単ではないと気づきました。
小竹:そうですね。どのような課題を解決したいのか、何を実現したいのかを十分整理されていないまま進めると、データ分析基盤を構築することが目的になってしまいます。
私たちが提案する際は、お客さまに「何を達成するためにデータ分析を行うのか」をヒアリングするところから始めます。KGIやKPIが分からないと、効果を測ることができません。効果が測れなければ、経営層も投資の意義や成果を判断しにくくなり、継続的な成果創出を実現する投資につながらない可能性があるためです。
また、分析基盤を利用する人に、活用方法を具体的かつわかりやすく説明することも重要です。業務でどのように活用するのかをイメージしてもらうための地道な取り組みがなければ、せっかく構築した仕組みも十分に活用されません。
――これまでに印象的だった事例を教えてください。
今井:過去には、コネクテッドカーから収集した走行データを分析する中で、国内で走っている車が、実際と異なる地域や海上を走行しているように記録されていたケースもありました。そういう異常値について、どの程度まで許容するのか、どういう条件で除外するのか、データの利用目的に応じて、関係者が一つひとつ話し合いながら決めていかなければなりません。
実際のデータには、欠損や異常値が含まれていることも少なくありません。だからこそ、何のためにデータ分析をするのかを明確にし、目的に応じて必要な品質の基準を定めることが大事なのです。
小竹:また、小さく始めることも重要です。大企業では、データ基盤を使って分析するデータ活用推進部門と、分析結果を利用する商品開発部門やマーケティング部門が分かれていることも珍しくありません。
そのため、各部門で目指す成果の認識が異なると、KGIやKPIにずれが生じる可能性があります。データ活用を円滑に進めるためには、基盤を構築する部門だけではなく、実際に利用する部門を含めて、同じ目線で取り組んでいくことが重要です。
今井:IT部門や利用部門の方にも入ってもらい、PoCのような形で、対象となるデータや機能を限定して試してみる。そこで効果があれば、徐々にスコープを拡大していく。私たちは大きな案件であればあるほど、小さく始めることを提案しています。
第三章:国内でも数少ない認定者だからこそ見える、Databricks活用の勘所

――今井さんは国内でも数少ないDatabricks Championの認定者です。Databricksの特徴や強みを教えてください。
今井:Databricksはデータの収集・蓄積、加工、分析、AI活用までを一気通貫で行うクラウド型のデータプラットフォームです。2025年にDatabricks Appsがリリースされ、これまで別環境で開発することも多かったデータ活用アプリケーションを、Databricks上で構築できるようになりました。
特に強みと感じているのが、ビッグデータ処理のオープンソース分散処理フレームワーク「Apache Spark」の開発者が設立した企業によってサービス提供されていることです。そのためオープンソースとの親和性が高く、様々な技術やツールと組み合わせやすい点に強みがあります。
私がDatabricksに出会ったのは、3~4年前ですが、その後、機能拡張がすごい勢いで進み、多くの課題を解決していきました。
また、近年ではデータ分析基盤としてだけではなく、Webシステムの開発にも使える点が強みです。これまではアプリケーションからリアルタイムのデータを取得し、何かの処理を加えて返すというような仕組みを構築する場合、並列処理を行う別のシステムが必要でした。現在は要件によって、Databricksを中心とした構成も検討できるようになっています。
加えて、2026年6月、米サンフランシスコで開催された「Databricks Data + AI Summit 2026」では、データ基盤やAIエージェントに関する多くの新機能が発表されました。日本ではまだ未提供の機能もありますが、これまで難しかったことが実現できるようになり、AI分析への可能性も広がっています。やりたいことに応じて柔軟な構成を検討できるソリューションに成長しています。
――Databricksは幅広い用途に対応できる次世代データ基盤なのですね。
今井:そう思います。ただし、「自由度が高い=使うのが難しい」という側面もあります。何でもできてしまうため、設計や運用方針など、自分たちで決めなければならないことも多い。だから導入する企業のスキルセットや目指す姿によっては、当社のような専門家のサポートが有効になるケースもあります。当社であれば、お客さまのニーズに合わせ、最適な形の活用法を提案できると思います。
小竹:僕はAuto Loader(オートローダー)という機能が好きですね。Auto Loaderはクラウドストレージに到着した新しいデータファイルを、追加の設定なしで継続的に取り込む機能です。以前は、ファイルを追加するたびにバックアップを取り、中身を確認して変換処理を行い、データベースに登録した後、元のファイルを削除するというステップを踏んでいました。ですが、Auto Loaderを使えば、バックアップが自動で実施され、データ取り込み処理の構築や運用を効率化しやすくなります。
今井:確かにAuto Loaderの他にも、企業がデータ分析基盤として活用するために欠かせない機能があらかじめ揃っています。そこがDatabricksの強みであり、活用する大きなメリットだと思います。
――具体的な活用事例を教えてください。
今井:ある車両メーカーの事例です。車両ごとに割り当てられた個体識別番号を活用し、工場から出荷された車両が配送ルートのどこにあるのかを可視化する仕組みを構築することになりました。メーカーは製造量の管理に活用したいと考えていたため、できるだけリアルタイムなデータを把握することを望まれていました。当時のDatabricksはリアルタイムの処理があまり得意ではなかったのですが、10分に1回大量のデータを取得し、それを加工して可視化する仕組みを構築しました。
小竹:昨今のカーナビは音声で行き先を設定できる機能があります。ですが、略称や話し方によっては、一度で目的地を正しく設定できないという課題がありました。そこで、音声認識機能の利用状況や認識結果を分析する基盤を構築し、機能改善につなげました。データを継続的に活用することで、音声認識精度の向上に貢献しています。
これらはほんの一例ですが、製造業は様々なデータの取得が可能です。データ分析基盤を構築するお客さまは確実に増えています。
今井:加えて、自分たちでアルゴリズムを組みたいというお客さまも多くいらっしゃいます。Databricksには、ガバナンスと自由度を両立する仕組みがあるので、お客さまに安心して分析環境を提供できます。利用者や用途に応じて、ガバナンスのレベルを細かく変えて提供できる点も、Databricksの強みだと思います。
小竹:とはいえ、想定外の利用や運用上の課題が発生することもあります。多くの社員が利用する場合は、データマネジメントやデータガバナンスを担う体制づくりも重要になります。私たちは運用コストと自由度のバランスを踏まえながら、データガバナンス、データマネジメントの仕組みをご提案することを意識しています。
第四章:AI時代のビジネス・産業をデータ活用で切り開く

――NTTデータMSEが目指すデータ活用ビジネスのビジョンについて教えてください。
小竹:私たちはデータエンジニアリングの領域から、データ分析の領域に入ってきました。また業界も小売から始まり、今は自動車をはじめとする製造業を中心にデータ活用ビジネスを展開しています。今後のビジョンの一つは、携わる業界をさらに広げていくこと。当社ならそれが可能です。なぜなら、金融業界であれば、NTTデータに金融のスペシャリストがいるように、グループ企業には様々な業界の知見を持つ人たちがいるからです。
もう一つは、データプラットフォームの構築・運用だけではなく、データガバナンスやデータマネジメントのルール設定など、コンサルティング的なところまで伴走支援できるようにすることです。お客さまが持つ、様々なデータ分析にまつわる課題を解決できるパートナーになる。それを目指してデータ活用ビジネスを広げていきたいと思います。
――NTTデータMSEが目指す、データ分析技術のビジョンについてはいかがでしょう。
今井:Databricks以外にも、様々なデータプラットフォームが登場しています。いずれのデータプラットフォームも、機能だけでなく、コストや運用性、ガバナンスも重要な選定ポイントになっています。
Databricksはそのあたりについても、バランスの良いソリューションです。Databricks Champion認定者としても、技術的な知見も含め、お客さまの価値になるような仕組みを提案していければと思います。
データ活用のコツとしては、先述のとおり、小さく始めることをお勧めしています。分析環境そのものを構築することは容易ですが、ガバナンスなども含めて、本番の業務で使える仕組みにするためには、小さく始めて、そこで問題がないかどうかを確認してから広げていく。そういう最初の一歩となる仕組み作りから、伴走支援をしていければいいなと思っています。
――データ活用に悩みを抱えている読者の方に、メッセージをお願いします。
小竹:当社の強みは、組み込みソフトウェアの開発からクラウド連携、データ分析基盤の構築まで、一気通貫でサービスを提供できることです。例えば車載システムで取得できるデータを活用するとします。しかし、そのシステムから取得できるデータがすべて分析に向いているとは限りません。分析に向いていないデータだったとしても、当社なら分析しやすい形式に変えるという提案ができます。データが生まれるところから利用者が活用するところまで、何が最適なのかを考えられるのが当社の特徴だと思います。
データ分析は、皆さんの課題を解決し、業務を改善するためのものです。まずはどのような課題があるのかを整理し、その解決につながる仕組みを小さく作る。そして、成果を見ながら大きく育てていく。当社は、そんなデータプラットフォームづくりを伴走していきたいと考えています。

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※2 所属組織および取材内容は2026年9月時点の情報です。